Q11. 日本の産業はアメリカの後追いで、何周か遅れて入ってきていますが、現時点でアメリカやイギリスが株主資本主義の考え方であるなら、日本もこのまま行くと程なくしてそのような極端に思える考え方が主流になっていくのでしょうか。

A. 日本では1990年代後半、政官財学を挙げて、日本的経営の批判を展開し、日本型資本主義をアメリカ型の株主資本主義へと変える構造改革に邁進しました。戦後の大企業が行ってきた日本的経営がそのまま21世紀でも通用するとは全く考えていませんが、だからと言って、格差社会や短期志向経営をもたらすことが明らかになり始めている米英の株主資本主義を日本に導入するのは誠にばかげたことであります。我々日本人がすべきことは、英米の制度を導入するのではなく、英米の制度の欠点を見極めたうえで新しいものを生み出し、まずは日本で実践して、その成果を見せたうえでアメリカをはじめ全世界に対して啓蒙普及していくことです。
にもかかわらず、1997年には商法改正によりストックオプション制度が導入され、自社株買いが可能になり、米国にならった社外取締役制度が導入された結果、アメリカで発生している株主資本主義の弊害が日本でも現実化しています。アメリカ風に「自己の株式の取得は、配当と同様に株主還元の一つである」という考え方も浸透しつつあり、配当性向に替わり総還元性向(配当総額と自己の株式の取得額の合計を、当期純利益等で除して株主還元率を示す考え方)を採用する上場会社も現れています。この結果、自社株買いの2018年度の実績は6.7兆円を記録しました。本来ならば事業経営のイノベーションに向かうべき資金だったと考えると背筋に寒いものを感じます。また、2000年代以降、株主配分の伸び率が従業員給与の伸びをはるかに上回るようになっていることは、日本の活力を損なう大きな要因の一つにもなっていると考えます。
日本での金融市場での外国人投資家の持ち株比率はいまや3割に達しています。取引量でみれば7割以上に達しています。(2019年10月現在)外国人投資家の中には株式の価格の変動で儲けるアービトラージと呼ばれる考え方で投資している人々が数多くいます。この人たちだけを優遇する金融エコシステムが日本にでき上がりつつあります。無駄な障害や既得権益を取り除き、実体のある起業を助け、産業を育てるための投資を促す「改革」や「規制緩和」であるべきですが、必ずしもそうなっていません。規制緩和の名の下で行われながら、実は投機家に対する利益誘導でしかない政策が数多くあります。日本に構造改革が必要だとすれば、単なる「市場原理」「規制緩和」「民営化」「自由化」ではなく、企業が公益資本主義を重視せざる得ない環境を作ることであると確信しています。

【日本の一人当たり従業員報酬と配当、自社株買いの推移】

一人当たり従業員報酬は横ばい、企業の純利益は最高益を更新、配当は着実に増加。内部留保も大幅に増加。自社株買いも積極的。

純利益=配当金+内部保留

出典:財務省HP

出典:財務省HP