Q6. 株主資本主義とはどういう概念ですか。

A. アメリカで主流となっている「会社は株主のものであり、株主の利益を最大化するために経営されるべきである。」と考える資本主義です。株主の利益を最大化するために会社にかかわる人々に犠牲を強い、企業の長期的な発展を妨げるシステムです。社会に有用な企業を崩壊に導く可能性を持っています。
アメリカも嘗ては企業は従業員や顧客、仕入先などを含めたパブリック(公的)なものと捉える人たちが多かったのですが、1980年代以降になって、明らかに変質していきました。
株主資本主義に変質した大きな原因は3つあります。
第1の原因は1980年代以降、理論経済学や計量経済学の発展により、「会社は株主のもの」あるいは、「すべての価格メカニズムは市場が決定する」といった考え方を、精緻な数学を用いて「証明」したとされたことによります。市場の欠陥の大きさと数学モデルの限界に十分な注意が払われていないという経済学の最大の問題点があるのにかかわらず、この経済学に基づく金融資本主義は、その原理において誤りがないという「信念」が広められ、「株主至上主義」が、あたかも普遍の真理であるかのように信泰されました。
第2の原因は、アメリカの資本主義をけん制していた社会主義国家が破綻したことによります。これにより、資本主義の悪いところへの批判がなくなり、これが大きく伸びてくるようになりました。
第3の原因は、1981年のレーガン政権の登場以降、産業、労働、社会保障、公共サービスなど、様々な分野で連邦政府による規制緩和が実行されたことによります。企業再編に関わる規制緩和が、1980年代以降、M&A(企業の合併・買収)の増加をもたらしました。M&Aの増加は、企業に株主価値を重視した経営を生み出しました。企業は株価を上げるためにROE(自己資本利益率)に代表される資本コストを意識した経営や株主への配分の増加を労働者の雇用や賃金の犠牲の上に行うようになりました。株価引き上げのための自社株買い・ストックオプションも増加していきました。ストックオプションは株価上昇に対する金銭的なインセンティブを経営者に与えることによって、株主と経営者の利害を一致させる目的で導入されて、1980年代以降の規制緩和により自由度が拡大しました。1997年、アメリカのCEOの団体であるビジネスラウンドテーブルは、経営陣と取締役会は、多様なステークホルダーの中で、株主に対して最大の義務を負うことを宣言しました。
世界193カ国の歳入と、世界の民間企業の売上高の大きさを比較すると、上位100社の中に民間企業が70近くも入ってくる。国家は国全体に税金を還流させますが、こうした巨大企業が利益を株主だけに還元したら世界は非常にいびつになる。今こそ企業の「公器性」を保つ考え方が必要です。

国家より大きな企業