Q4. 公益資本主義でのあるべき企業価値の内容を教えてください。

A. あるべき企業価値は3つの指標になります。
① 富の分配の公正性
企業が事業によって得た富を、どのように分配しているかを示す指標です。株主と経営陣が利益を独占する株主資本主義と異なり、公益資本主義の下では、すべての「社中」に公正に分配しなければなりません。
経営陣と一般従業員の年収の差(ブルームバーグ調べ)
アメリカ  1980年代 42倍  2013年 204倍
日本    10~15倍程度
平均的なアメリカ人の年収は350万円程度まで下がっています。
「アメリカンドリーム」という言葉に代表されるかつてのアメリカ社会はもはや見る影もありません。
会社が儲かり、経営者は裕福になっているのに、従業員の給料は上がらず、雇用も維持されなければ、従業員のモラルや参加意欲が下がるのも当然です。
そんな企業は力を失い、成長も望めません。長期的に見れば、不満や嫉妬を生まない公正な経営の方が、創造性を発揮でき、将来性をもつのです。

② 経営の持続性(中長期経営)
「会社は株主のもの」という考え方は、短期の利益や株価上昇ばかりを追求します。内部留保を取り崩し、短期志向の研究開発費を増やすことはあっても、中長期の研究開発費を圧縮し、人件費を削って無理に利益を出させ、配当として吐き出すことを求めます。さらには、企業経営者に自社株買いを要求して、人為的に株価の上昇を狙います。
米国企業によく見られる利益の100%を越える株主還元(株主配当と自社株買いの合計額)を繰り返せば、やがて企業は体力を失い、持続的な成長などとてもできません。
松下幸之助の「ダム経営」と同じように、自然災害や金融危機など、突然の危機が生じても、従業員や会社を守れるだけの内部留保や流動性資産を持っておくことは企業にとって極めて重要なことです。これを実行するとROEを下げることになりますが、ROEより遥かに大切な「経営の持続性」を増強できます。
経営陣と従業員が長期的なビジョンや目標を共有している会社は、経営に揺るぎがなく、従業員の幸福感を高めます。
逆に、経営陣が経費や人件費を削って財務諸表の数字を整えることばかりに腐心している会社では、従業員の幸福感は低下します。
⇨短期的な利益ではなく長期的な成長を目指す経営の方が、会社にとって、また株主にとってもプラスになる。この価値観の転換を、ぜひとも図らなければなりません。

③ 事業の改良改善性(企業家精神)
企業は変化に対応できる柔軟性を維持しなければなりません。たとえば、アメリカのGMが衰退した原因に、大型車から小型車への切り替えができなかったことがあります。1970年代のオイルショックを機に、消費者の関心は日本車など燃費の良い小型車へ移っているのを知りながらも、大型車の方が1台当たりの儲けが大きかったため、上手にシフトできなかったのです。
成功体験をもつ企業ほど、商環境の変化に対応する柔軟性を失い、新しい業態への転換が難しくなります。目先の利益に捉われずに、組織を硬直化させず、変化への柔軟性をいかに確保するか。経営の改良改善性も、公益資本主義の下での企業価値を決める要素です。