Q1. 公益資本主義とはどういう概念ですか。

A. 米国型の株主資本主義でも中国型の国家資本主義でもない21世紀の人類社会が直面するいくつもの課題を解決できる新しい社会経済システムとして提唱している概念です。
会社は社会の公器であり、会社を構成している従業員、顧客、株主、仕入先、地域社会、さらには地球といった、いわゆるステークホルダーに支えられて成り立っています。福沢諭吉はこれを「社中」と表現しました。公益資本主義の根本は、「経営陣はこれら社中全体に持続的に利益還元するために収益を上げるべく、中長期的視点にたって経営すべきである」という考え方にあります。
公益資本主義の下で行う事業においては、利益分配は株主だけに重きを置くのではなく、すべての社中に対する「分配の公正性」を達成することが大切です。これが公益資本主義の第1の要素です。日本には、昔から近江商人の「三方よし」、すなわち「売り手よし、買い手よし、世間よし」の考えのように、公益資本主義に近い思想があります。売り手の都合だけで商いをするのではなく、買い手が心の底から満足し、さらに商いを通じて地域社会など世間の発展や福利の増進に貢献しなければならないという考えです。一緒に働いてくれる従業員を家族のように大事にすることは、日本の商いの伝統です。このように、もともと日本には公益資本主義の思想基盤があるのです。
分配には数量的な基準はありません。経営トップが「今年は従業員が頑張ってくれたから彼らに報いよう」とか「思い切ってこの分野に社会貢献しよう」など、自らの判断で決めればよいのです。米国ではやりのCSR(企業の社会的責任)は、何だか取ってつけたような感じがあり、経営の本質的な要素として位置づけられたものではないと考えられます。そうした、社会への貢献を通じて、個々の会社も持続的に発展できます。
一握りの富裕層に富が集中して中間層が没落する格差の拡大を防ぎ、中間層を基盤とする民主主義を守るためにも、実体経済を豊かにする公益資本主義を広げる必要があります。日本は、長い歴史の中で独自の倫理と資本主義の精神を培い、高い技術力を磨き、ものづくりを中心に実業をコツコツと積み上げてきました。そのような日本の社会や経済を支える一人一人が、みずからの持ち場で夢を描いて努力を積み重ねれば、必ずや大きな成果が生まれるはずです。